小さな恋の物語

後ろには7人の子が歩いている。集団登校のリーダー6年生のいない、このグループは5年の僕が先頭を歩く。4年生が3人、3年生はいなくて2年生と1年生は2人ずついる。その7人を引き連れて、たった10分ほどの登校時間の隊長だ。

そして、それを支えてくれているのは4年のアスミだった。僕は勝手にアスミを副隊長と決めていた。アスミはいつも2番目を歩いていた。時々後ろを振り返り、

「二列になったらダメよ」と下級生の事もしっかり見ていた。

 

ある時、アスミ達4年の女の子三人が誕生日の話をしていた。

「アスミの誕生日ってもうすぐだよね~」そんな話が聞こえていた。その時僕は思った。

いつも僕を支えてくれている副隊長に何かプレゼントをしよう!


次の日曜日、僕は、お小遣いを握りしめ、近くのショピングセンターに向かった。

プレゼントを選ぶのは初めてだ。ましては女の子へなんて・・・

まる一日いたんじゃないかと思うぐらい悩んで、僕は小さなクマのぬいぐるみとクマの刺繍が入ったピンクハンカチセットを選んだ。ラッピングもしてもらった。

水色の布袋に赤のリボンで結んだ。そのプレゼントは今自分の勉強机に上にある。

そのプレゼントを見て少しにやけている自分がいた。


誕生日まであと4日

登校時間、何も変わらない、いつもの登校なのに何故か嬉しい。

待ちきれない!そんな気持ちをおさえつつ、今日は一日乗り切った。


誕生日まであと3日

登校時間に我慢が出来なかった、僕は自然な感じのつもりでアスミに話しかけた。

「アスミってもうすぐ誕生日だよね、何かほしいものある?」

少し驚いたか戸惑ったか、分かりにくかったが、すぐに何も答えなかったので僕はすぐに話をそらした。(そもそも、何かほしいものある?って聞いてどうするんだ!もう買ってあるのに、ほんとに自分のバカさ加減にあきれる)。必死に話を変えたが、ごまかしきれたとは言えない状況だったが、その日は学校までの10分がすごく遠く感じた。


誕生日まであと2日

アスミはいつもの登校列の4番目にいた。僕が先頭なのは、学校から決められているけど、アスミが2番とは決められていない。そもそも副隊長なんて僕が勝手に思っていただけだからアスミ達は知らない。4年生の3番目を歩いているアスミの事、僕以外の他の誰も順番の事など気にしていない。楽しそうに4年生が話しながら歩いている。

昨日あんなミスをおかした僕としては今日のアスミの順番はとても大きな意味を持っている。でもそれを確認する事も出来ない。家に帰ってから、水色の布袋を眺めた。

三日前とは見え方が全然違う。あんなに楽しんで選んだ小さなクマのぬいぐるみとピンクのハンカチ。今となっては邪魔にも思えてきた。それでもアスミの事が頭から離れない。


誕生日まであと1日

アスミは今日も4番目、今までこんな気持ちになった事は無い、何をしていてもアスミの事しか考えられない。アスミは今何を思っているのだろ、アスミはあの時どう思ったのだろう、アスミは何故4番目を歩いているのだろう、アスミは・・・夜寝るその時までアスミの事が離れなかった


誕生日当日

登校時間、4番目を歩いているアスミと楽しそうに話している4年生

今日一番聞きたくない会話がされている

「アスミ今日誕生日だよね」「おめでとう」

僕は聞こえてないふりをして、ただまっすぐに学校を目指した。学校が終わって家に帰ってきた僕は、水色の袋をみていた。落ち着かない時間が続き、時計を何度も確認する。まだ行ける時間だなと思いながら時計を見ている自分は・・・

ずっとアスミの事を考えている・・・

悩んでいそうだけど時計を見ている地点で行くつもりなのだと

行きたいのだと確信した。その瞬間、僕は水色の布袋を持って

玄関を飛び出した!日が沈みかけた通学路をアスミの家まで走っていく!


 

翌日

すごく晴れたとてもいい天気、そんな風に思えた、気持ちの問題なのかな?

後ろを振り返った僕。そこにはアスミがいた。一瞬、目が合ったその目線をゆっくりと下に下ろした。アスミのズボンの右のポッケ。クマの刺繍が入ったピンクのハンカチがそこにあった。

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石橋を叩いて壊す。渡らなければ怪我はしない。そんな生き方をしてきた私が、何を思ったのか新しい事にチャレンジしてます。いつか短編小説を本として出したいと言う目標を持って小さな一歩を踏み出しました。パソコンが得意では無く、もちろん物語など書いた事がない私がブログ書いて行こうと思います。